「やおい小説家なんかじゃないもん。」
 ちょっとおかしなやおい小説です。腐って来てるけど……(笑)。
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DATE: 2006/03/27(月)   CATEGORY: 第一章
その一。
 「かみむら~、お前って夜、ゲイバーでバイトしてんだろ!」

 頭上に大声が響いて、頭の天辺を平手でばしばし叩かれた。口からパスタをぶら下げたままギョッとして見上げると、同僚の平塚だった。長身で、ヒゲの濃い顔に黒縁のメガネ。髪を後ろで括ってる。イタリア物のスーツを、センス良く「着崩して」る。同じクリエイティブ局では、同期と言うこともあって週に数回は飲み歩く仲だ。

 ゲイバー、って聞いたから、鼻からスパゲティが出そうになったけど、必死にこらえた。飲み込む間に、なんとか平静を取り戻した。

 「なに言ってん、わたし、昨日はあんたのせいで、11時まで残業だったんだよ? 直帰するから部長に例の書類出せってメールだったからそうしたら、やり直しだったんだよ。なのにあんたはゲイバーなの、え? それに大体、あんた、そんな変な趣味あったの?」

 平塚は空いていたわたしの隣にドサッと座り、ニヘラと笑うと言った。

 「いやあ、昨夜は**の接待でさ、六本木のちっと高級なとこ、ネットで調べて行ったんだよ。なんかさ、すっごい綺麗なニューハーフがいるって店。あ、そういやあそこは、ゲイバーじゃなくてニューハーフ・パブか。とにかくそしたらさ、ドア開けたらお前がカウンターの向こうに立ってんだよ。いや、ホントそっくりなんだな、これがさ。」

 ……だから止めろって、言ったじゃん。あの馬鹿。

 「で、思わず絶句してさ、阿呆みたいに口開けてその女……、いや、オカマさんを観てたら、その人がにっこり笑って言ったわけ。いらっしゃいませ、ってさ。そしたら、声がやっぱり低いんだな。それに、ボックスに座ってから横目で見てると、胸もケツも上村よりでっかいし、髪もお前がショートなのにあっちは長かったし。んで、これはまあ他人のそら似かな、と(笑)。それに、あっちの方がお前より美人だったもんなあ!」

 ……こうなったら、ちゃんと聞いておこう。

 「塚ちゃんさあ、そのお店って、触らせたり、抱かせたりする手のお店? あんた、それでその子をどうしたの?」

 「普通のキャバクラとかだったら口説いたかもなあ。けど、オカマだぜオカマ。おまけに、上村にそっくりなんだ。オレが口説くわけ、ないだろ。」

 ……なに言ってんだか。最初のコンパで口説いてきたのは、誰だ。
 
 「でもさ、新宿二丁目とかだったら、やらせてくれる店がどうしたこうしたって、昨日ネット見ながら言ってたじゃん。クライアントがその趣味だけどオレはやっぱり嫌だとか。そういう店だったから、そこに行ったんじゃないの?」

 平塚は携帯を引っぱり出して、時計を確かめて言った。

 「いや、結局はさ、その人もその手のオカマに興味があって、一度行ってみたいって程度だったみたいだよ。それに、あの店は酒がボトルで一本5万だぜ、5万。酒だけでもう充分儲かってんじゃないのかな---と、オレは打ち合わせだから、もう行くよ。昨日の詫びで、ここはオレの奢りだ、感謝しろよ。んじゃまたな、オカマちゃん!」

 伝票をつまむと立ち上がり、手を振りながら食堂の出口に向かう平塚の背に向けて、わたしは「何言ってんだ、変態はお前だろっ! 社員食堂で借りを返せると思うなよっ!」と言い返した。周りの人たちが、またあの二人か……なんて感じで、笑ってこっちを見てる。

 食欲はゼロになっていた。

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